FC琉球の開幕を楽しみにする会

平素より大変お世話になっております。

突然ですが、今年からJ3リーグ所属のFC琉球の2023シーズン開幕に向けた文章を垂れ流してみようと思います。

まずお断りとして、私は関東圏に住んでいるので沖縄でのキャンプ、TM、練習などは一切見学しておらず、情報源はタグマ!の有料記事程度です。

事前情報がなく、目新しい切り口もない内容かと思いますが、今年のテーマは「アウトプット」「言語化」だと信じて、せっかくなので書いてみます。

 

【結論から申し上げると?】
現時点の琉球のワクワクポイントは以下の通りとなります。
・若手選手たちがどれだけ輝けるのか
・倉貫監督が志向するサッカー(=特にネガトラとアタッキングサード)と、それを実現する選手・フォーメーションをどう考えているか
・未知の領域(個人的に)のJ3がどのようなレベルなのか、そして琉球がどのような成績を残せるのか


【選手編成】

soccer.yahoo.co.jp

想像していたより昨年の選手が残留してくれたようには見えるのだが、センタリングで違いを見せられる沼田、田中の両SB、チームの心臓と肺を兼任していた池田、スピードと運動量による貢献が確実に計算できた大本、決定力を持つ草野など、優秀な選手は的確に刈られている。

またJ2(J1)への個人残留(昇格)があまり生じなかったのは、昨年の琉球の選手に対する市場の評価がその程度と考えても大外れではないだろう。
下位カテゴリーほどクラブ間の資金力に大きな差がなく、さらにJ3といえどJ2経験クラブも多いことから昇格争いは拮抗すると予想されるので、「J2 21位の戦力が割と残せた」 = 「J3 1位」とはいかないと予想する。

逆に加入選手は大卒やレンタルをはじめとした若手選手が多い。上記のページで見ると分かりやすいが、新加入選手は2名を除いて24歳以下。新卒以外でも、正直プレーを見たことがある選手はほとんどいない(琉球京都サンガ以外追いかける時間がねンだわ…)。そしてそんな彼らがトップチームの半分近くを占めている。長丁場かつ昇格を目指すために落とせる試合が少ないシーズンを過ごす上で、いかに彼らの長所を発揮させ、短所を守れる戦術を構築できるかが倉貫監督の腕の見せ所と考えられる。

 

【フォーメーション】
上記の発言と残留した選手が比較的多い編成から考えると、適正ポジションの選手が多い4バックが第一候補。3バック(5バック)にしてはCBの頭数が心許ない。なおかつ失点の多さを改善できず降格した昨シーズンの反省も踏まえると、4バックに2ボランチを並べた4-4-2 or 4-2-3-1が無難か。

 

【ボール保持&ポジティブトランジション
ここ数年のチーム作りと同じく、低い位置からショートパスを繋ぎながら前進する姿勢が基本線と考える。J2昇格後から走力やパワーよりはボールスキルに長けた選手が多く揃っており、アタッキングサードに到達するまでは足元のショートパスを多用していくと予想される。
(余談だが、CBの間にボランチが落ちるいわゆる「サリーダ・ラボルピアーナ」、相手の2トップのプレスをかわすための策ではなく単に球出し役がボールをのんびり持つために下りていることが多く、さらに後方で数的優位を作ってもボールを運ぶ意識がないため攻撃面の効果が薄いことから筆者は大嫌いだったので減らす指導が入っていればいいのだが…)

昨年から残留のスレイ、野田といった前線のターゲットとなれる選手は存在するが、最後方から彼らに放り込んだとてチーム全体の押し上げがなければ彼らが孤立して効果的な攻撃にはならない。ナチョ前監督のような直線的な攻撃はひとまず影を潜めるだろう。
金崎や阿部(白井も?)は裏のスペースに飛び出す動きもできそうだが、それが個人のアイデアベースになるか、チームとして約束ごとを設けるのかは注目したい。

個人的に気になるのがアタッキングサードの局面である。というのも、基本的に近年のFC琉球の成功体験は「サイド攻略サッカー」(not攻撃サッカー)であると考えているからだ。
J3で猛威を振るったのは西岡・徳元両SBの縦の突破と富樫・富所両SHの質的優位であり、J2の躍進を支えたのは徳元・沼田・田中恵太・風間らのクロスボールであった。
ただ、今年の編成でいうと福村はそもそも上下動に消極的、上原はまだ対面を剥がす勇気が心許ない。高安はスピードがあるという触れ込みだが、荒木は大学時代の動画を見ただけだがプロレベルで仕掛けられるか…?って感じ。

過去とは少し違う編成の中、倉貫監督がどんな攻撃戦術を構築しているのかに注目したい。と言いつつ、あのグアルディオラですらこんなスタンスなので、「アイデア出していこ!」になるんだろうとは思う(勝手に引用していいのか?)。

そこから先のゾーン(筆者注:敵の中盤の守備ライン以降)はアタッカーたちが持てるタレントを存分に解き放って違いを作り出すための場所であり、戦術の役割は彼らにボールを送り届けるところで終わりだ、とまで言っていました。
レナート・バルディ; 片野道郎. 『モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー 』

上記の理由から、相手からボールを奪った後の局面についても、縦に急ぐのではなく従来通りじっくり繋ぐ志向と予想。

 

【ボール非保持&ネガティブトランジション
2021年前半の躍進時に見られたローブロックの撤退守備が予想される。プレス開始位置はハーフウェイライン前後。もしここよりもプレス位置を上げた積極的なハイプレスを行うとすると、個人的に前線は3トップでDFラインにはスピードがある選手を揃える必要があると考えるが、そのどちらも揃える気がなさそうだ。

※以下冗長な根拠
有名な言葉で「サッカーは寸足らずの毛布」と表現されるように、今の人類は10人で105m×68mのピッチ全体をカバーできない。どこを隠してどこを晒すのかがボール非保持時の動きを決める最初の原則だ。
また、サッカーの守備は相手にミスがない限り数的不利を覆すことはできない。となると、もしハイプレスで相手最終ラインに圧力をかけるなら数的同数をぶつけないと機能しない。現代ではビルドアップ時に最終ラインに4人並べるチームはない(秋田豊監督初年度の岩手がそうだったがひどい有り様だった)と考えると、相手3枚に対して前線に3枚並べたいし、最終ラインからのボールの出所も潰す必要があるのでIHを1,2枚置きたい。フォーメーションの有力候補は4-1-2-3ぐらいだろう。見てるのがシティと曺貴裁ばっかりじゃないかって?そうかもな。
また、ハイプレスによって必然的にハイラインになると毛布からはみ出すのはDFラインの裏。経験の浅いDF陣に広大なエリアのカバーを任せるかどうか(恐らく牟田には無理)は倉貫監督の度胸次第だが、現実的に考えたら撤退かなと思う。

そして、昨年『即時奪回』を掲げて無残に散ったネガティブトランジションをどうするかは結構興味深い。現代の攻撃サッカーはこの局面のデザインからスタートしないといけないと思う。ボールを奪われたとしてもすぐに奪いに行く心技体の構築はもちろん、偽SBに代表される予防的ポジショニングも世界中で前例が生まれている。
編成から考えるとそこまで尖ったことはさせずに撤退が第一なような気がするが、J3優勝の年はアンカーの小松が中盤ガラ空きの神風プレスを仕掛けても相手のボールスキルの低さに助けられて収支が取れていた。昨年完全にしくじったチームをHCとして見ていた倉貫監督に何か策があることを期待したい。

 

【チーム成績】
本当にわからない。J3の他チームの戦力動向が一切わからない。すみません。
希望的観測込みで述べると、さすがに昇格争いには絡むんじゃないかとは思う。戦術兵器のスレイや阿部拓馬が残ったし、中盤の武沢と富所も信用できるし、GKの田口、カルバハルとハイレベルな2人がいる。劇薬の金崎もいる。
懸念は上に出てこなかったDFライン。頭数がやや少ないし実績のない若手に偏り過ぎている。怪我やコロナで台所事情が苦しくなった時の不安が残る。地味にボランチも。
ケルヴィンや清武、中野も、局面を切り取れば優秀なアタッカーではあるが、1試合を通して、そしてチームの働きの中で、収支がプラスなのかマイナスなのかは実戦を見てみないとというのが正直な気持ちである。逆に言うとそうでなかったらJ2クラスの選手たちなので、期待と不安が半々である。

それともう一点不安なのが、「選手を尊重する」系統の倉貫監督のチーム作り。
静岡の水色のチームを見ていた経験からも痛感するのだが、ピッチ内の選手に委ねる部分が大きいチームは往々にしてベテラン選手が幅を利かせがちになる。経験や技術によって部分最適を選べる確率が上がるからだ。このようなチーム作りだと、若手中心の琉球と相性が悪いかもしれない。
さらに、スタメン組とサブ組の実力差が大きくなる(別名・樋口現象)。いまだ燻るコロナに襲われてチームが崩れないことを祈るばかり。そもそも戦術は選手を守るためにあるのであって、ピッチ内の振る舞いを選手任せにするのなら圧倒的な札束で殴り勝つ覚悟がいると思うのだが…。

とはいえ、例えば金鍾成監督時代などはチームの型もありつつ、選手を縛っているような声もあまり聞かなかった(当時は報道が少なかったのだろうか)。私の頭が四角いだけであることをこれまた祈るばかり。

あと、J3は地方クラブも多いから、移動の負担とかもどうなるんでしょうね。別に言い訳にはなりませんが。

 

【開幕戦スタメン予想】

個々のプレーヤーが果たす機能も、固定的な「ポジション」にではなくシチュエーションに応じたプレー原則という「タスク」によって規定されるようになってきている

レナート・バルディ; 片野道郎. 『モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー 』

今やコモンセンスになりつつある書籍の引用を俟たずとも、サカつくFIFAのように選手の能力でスタメンが決まるのではなく、あるサッカーを実現して勝利するために選手が決まるべきである。ナチョ前監督の(おそらく)セットプレーからの失点を避けるための用兵により、上原牧人が右SBのスタートポジションを掴み、田中恵太が出場時間を失ったことは記憶に新しい。
私は今年の練習やTMを観に行っていないので琉球が目指すサッカーがわからない(わかったとしても書けない)のでメンバー予想はできない。あと個々のコンディションが一切分からないし。ただ、逆に言うと開幕スタメンから監督の狙いが伺えるかもしれないということでワクワクしたい部分である。やっとタイトル回収ができた。

例えば自陣深く引く守備をするのならCBには高さ強さのある牟田が重用されるであろうし、前から積極的に行く守備をするなら上原や大卒2人のような比較的機動力のある選手がポジションを掴むはずだ。
FWやSHにしても、ボールを持った時の創造性を求めるか、FWに届けるキック精度か、献身的なフリーランや守備を求めるか。試合が始まるまでのお楽しみ。

と言いつつ何も知らないなりに無難に予想するならこんな感じ。

【注目選手】
#5 MF 武沢一翔
今年彼のユニフォームを買ったから、ではここまで真面目に書いてきた示しがつかない気もするが、割と本気である。
運動量は折り紙付きなので、中盤でボールを持ってもう少しモダンな振る舞いができればもう間違いなくJ1.5(J2昇格争いレベル)、先達の池田廉の背中が見えてくるであろう。ターンで剝がして前を向く、とか。運ぶドリブル、とか。
ボールを持った時に対面を上回ることができるプレーができるかどうかでサッカー選手の価値の上積みが決まる時代になっている。

#13 MF 岩本翔
史上初の中学三冠を達成した2007年のG大阪JY。その中心だった岩本の兄和希は、G大阪Y、関学を経てG大阪入りしたものの、第一線で輝くことはできなかった。同世代の市丸は琉球にもやってきたが、現役を退いてしまった。その一方で、堂安のようにW杯で名を上げた選手もいる。長年サッカーに触れてきた身からすると、「期待と裏切り(←良い意味と悪い意味両方)の積み重ね」がサッカーの歴史なのかなと感じる。
岩本翔も、G大阪Y時代から将来を嘱望されながら、トップ昇格はできず、大学時代は怪我で苦しんだらしい。プロキャリアの始まりはJ3になってしまったが、ここから輝いてほしいなと思う。上門、徳元、小泉、知念。前例は十分だろう。

 

【注目のアウェイ遠征】
最後に緩い話でも。
行ったことがない&J3クラブしかない土地はどうにかして行きたい。東日本だと八戸、福島、松本、長野、富山(京都サンガとハシゴ予定)とか。西日本は日程が厳しいかもしれないが今治(確定)、岐阜(ほぼ行く)、北九州(お盆休みにかこつけて行けるか)、大阪・奈良(昔の友人に会えれば…)辺りは行きたいなぁ。

 

【終わりに】
冒頭にも書いたが私は関東住み。ホームゲームで入場料をチームに落とすこともできないし、大旗もゲーフラも持っていない。それでも、アウェイゲームで選手たちに少しでもベンガラ色を感じてもらうためにアウェイに足を運ぶつもりだし、歌いにくいチャントでも全力で歌うつもりである。

クラブに対して、サッカーに対して、色々思うことがないこともないが、故郷のクラブということで、あまり多くを求めないスタンスでいようと思っている。色々なリソースが足りていないのは想像できる。それでも、クラブが存続してくれればいいじゃないかと、そんな気持ちで今年も追いかけていこうと思う。

 

心の赴くままに指を動かし続けていたら6000文字近く書いてしまった…。相変わらず俯瞰でサッカーを見る目を養うことはできていないが、もしかしたら長い文章に落とし込むためなら何か今までと違う見方ができるだろうか。何とかさぼらず更新は続けていきたい。
それでは、お疲れ様でした。お先に失礼いたします。

 

<本日の一曲>
City Boy City Girl/カフカ

www.youtube.com